30分で子どもの成長力を高める方法

ソフィーでは毎月保護者向けニュースレターを配布しています。過去記事より人気のあったものを今回はお送りします。

30分で子どもの成長力を高める方法

【現状】何を大切にして子育てをしていけばいいのかわかりにくい

子供を育てるということはとても楽しく意味の感じられる経験です。でも、同時にたくさんのストレスも経験するものです。子供の将来を考えれば、学校の成績、進学先の選択、受験、就職、昇進・・・と多くの心配事が頭に浮かびます。これまでは「良い大学」を出れば、一生安泰だ、と思われてきました。そしてその安心を手に入れるために偏差値の高い大学に入ることを目指し子供の尻を叩いていけば良い、という風潮が少なからず日本の中にはありました。しかしそんな世の中の風潮は変わってきています。社会の変化は年々激しくなり、今までは安泰だと思われた会社でも今後いつまでも安泰とは限らない、という時代になってきました。ですからこれからは学歴があったからって将来安心なわけではありません。でも、学歴がなかったらそれはそれで余計に心配な気もします。そんな中で、これからどのようなことを大切にして子育てしていけばいいのでしょうか?

【解決策】子供の「成長力」を高めることを大切にすべし

このような変化が激しく不透明な時代の中で、子育てにおいてもっとも大切にすべきことは、子どもの「成長力」を高めることである、とソフィー学習塾では考えています。「成長力」があれば、どんな予想外のことが起こり、大きなストレスがかかる状況が本人の身に降りかかったとしても、その状況の中で成長し、自分の力で乗り越えていけるからです。

サンフランシスコの荒れた高校で行われた実験

ここでテキサス大学の心理学者デイヴィッド・イェガーがカルフォルニア州で、当時もっとも学力が低かったサンフランシスコの高校で行ったある実験を紹介しましょう。イェガーはこの学校の一部の生徒たちを集め、彼らに短い研究論文を読ませ、いくつかの重要な考え方を紹介しました。

  • ・今のあなたがそのまま将来のあなたになるとは限らない
  • ・まわりの人が今あなたをどう扱っているかやどう見ているかは、あなたの将来を示しているものであるとは限らない
  • ・人間の性格は長期的に良い方向に変えることができる

次に、彼らには上級生たちが書いた自分たちの良い変化に関する体験談を読んでもらいました。そして最後に彼らに「人間は長期的に変わることができる」ということに関する自分やまわりの人の経験を書き出してもらいました。イェガーがこのプロセスを行ったのはたったの30分間でした。しかも場所は体育館。この短時間の、決して良いとは言えない環境の中で行われた取り組みは、その後びっくりするような成果を収めていたことが判明します。1年後の追跡調査では、この実験に参加しなかった生徒たちよりも参加した生徒たちは、より自分たちが直面している問題に対して楽観的になっていることがわかりました。さらに彼らの方がより良い健康状態になり、うつ状態になる割合も低くなっていました。実験に参加しなかった生徒たちの数学の単位取得率が58%だったのに対し、実験に参加した生徒たちの取得率は81%にも上りました。(“The Upside of Stress“,p.25-26から抜粋し要約、邦訳)この実験の成果をすぐに信じることはもしかすると難しいかもしれません。それくらいびっくりするような数字です。しかし、もし本当だとしたら?私たちはどんなことを子供たちにしてあげることができるでしょうか?

実験結果からわかること→親から子供に伝えていきたいメッセージ

この実験結果からわかることは、私たちが子育てをしていく中で最も大切なことのひとつは「あなたは成長していくことができる」というメッセージを彼らに伝えていくことである、ということです。私たちはしばしば子供の将来を心配するあまり、「勉強しなさい」という言葉で、「あなたは成長する力がない」というメッセージを間接的に伝えてしまうことがあります。そういうつもりはないのに「成長する能力がないから、今のうちに良い成績を取っておかなければならない」というようなニュアンスを不本意にも子供に伝えてしまうことがあるのです。このようなメッセージを伝えないように気をつけ、その代わりに「あなたは成長していくことができる」というメッセージを常に伝えるように意識してみましょう。仮に子供が何かできなくて困っていることがあったとしても「今できなくても、将来必ずできるようになるし、そのための能力はあなたの中に備わっている」ということを伝えていきましょう。同じことを言うにしても、言い方ひとつで伝わるメッセージは正反対のものになりします。つい子供に小言を言いたくなる時に、3秒だけ間を置いてこのメッセージを自分の中で確認してから、その言葉を言うようにするだけでもだいぶ違ってきます。もちろん、学校の勉強で成果を上げることは「自分は成長する力があるんだ」というのを実感してもらうのに役立ちます。それを実感してもらうことを目的にして、勉強しやすいようにサポートをしてあげましょう。場合によっては本人の体調が悪かったり、まわりの友達との人間関係に悩んでいたりして、勉強に手につかないかないような時期もあるかもしれません。そのような時でも一貫して「あなたは成長していくことができる」というメッセージを伝え続けるように意識してみてください。これを意識して行うことで、すぐに明日から子供が見違えるように変わる、というようなことはないかもしれません。でも、親としての気持ちはすぐに変化が出てきます。そしてその意識を持ち続けることで、着実で持続的な効果はきっと見られてくるはずです。ぜひ試してみてください。

追伸1:「あなたは成長することができる」というメッセージを効果的に伝えるには、そのメッセージを伝える親自身も「私は成長することができる」ということを信じていることも、とても大切です。子供にメッセージを伝えていくのが難しそうに感じる場合は、まずは自分自身にそのことを言い聞かせるようにしてみる、ということろからスタートしてみるのも良いかもしれません。

追伸2:この記事のもとになった書籍”The Upside of Stress”は日本語訳版も出ています。→『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』さらに深く知りたい方はぜひ読んでみてください。