【ソフィーメソッドの極意】 「繰り返し覚える」よりも 「繰り返し思い出す」

「覚えたはずの単語や重要語句なのに、テストを目の前にして忘れてしまった」という経験はないでしょうか?どうしてこういうことが起こってしまうのでしょう?実はこういう現象が起こるのには理由があり、その理由を知りしっかりと対処していけば、かなりの割合でこういう残念な経験を減らすことができます。

「覚える」ことと「思い出す」ことは、別々の行為である

学生時代、テストの前日に何度も繰り返し覚えたはずなのに、当日答案用紙を目の前にしたら「覚えたはずなのに思い出せないっ(汗)」という経験はないでしょうか?また大人になってからも、たとえばお客さんや取引先の方の名前を覚えていたはずなのに、その人を目の前にしたら急に「名前が出てこないっ(焦)」ということはないでしょうか?
実は「覚える」ことと「思い出す」ことは、2つの別々の行為です。ですから「覚える」ことをしたからといっても、「思い出す」ことができるとは限りません。

そのことをわかりやすく示した、ある調査とそれに関連する話を紹介しましょう。最新の学習心理学を体系化した良著 “Make It Stick“からの抜粋です。

UCLAの心理学科の教員と学生を対象に、自分の研究室、教室にもっとも近い消火器はどこにあるか訪ねる調査を行ったところ、ほとんどが不正解だった。UCLAで25年間教えているある教授などは、安全訓練のクラス中、教室を出て自分の研究室から一番近い消火器はどこにあるか、探しに行った。すると消火器はなんと研究室の扉のすぐ横、毎日何回も開け閉めするドアノブから数インチ先のところにあったことに気がついた。(”Make It Stick”, p.13を翻訳)

この文章を読むと、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の優秀な学生や教授たちでさえ、「繰り返しインプットを行った」だけではその情報を「思い出す」ことがうまくできないのだ、ということがわかります。

必要なときに覚えた情報を思い出せるようにするには?

覚えようとして繰り返しインプットしても、必要なときに思い出すことがうまくできないとしたら、いったいどうすればよいのでしょうか?必要なときに覚えた情報を思い出せるようにするためにはどうしたら良いのでしょうか?

その答えは簡単。「覚えるトレーニング」の後に「思い出すトレーニング」をできるだけ繰り返し行えば良いのです。

たとえば「教科書を繰り返し読む」「教科書に載っている解き方を理解する」とか「音読をする」とか「ノートを見返す」とか「繰り返し書き出す」というような「覚えるトレーニング」は1回か2回程度に抑えて、その代わりに、できるだけ早くそして多く「クイズ」や「ミニテスト」「チェックテスト」のような「思い出すトレーニング」を繰り返し行うようにするのです。

このように「覚えるトレーニング」よりも「思い出すトレーニング」を多くした方が記憶の定着率(すなわち覚えたものを思い出せる率)が高まることはすでにかなりの実験で実証されています。

その中から2つ紹介しましょう。いずれも “Make It Stick”からの抜粋です。

2010年、ニューヨークタイムズ紙に、ある科学研究の結果が掲載された。その研究では、生徒たちを2つのグループに分け、1つ目のグループにはある文章の一節を読ませ、2つ目のグループには同じ文章の一節を読ませた直後に簡単なテストを行った。1週間後、2つのグループにテストをしてみると2つ目のグループの方がなんと50%も多くの情報を覚えていた。(p.29から抜粋して意訳)

つまり「覚えるトレーニング」だけのグループより「思い出すトレーニング」も加えたグループのほうが50%も記憶率が高かった、ということなのです。

被験者を2グループに分け、1つ目のグループには大学の講義で扱うような科学に関する文章を2度読ませた。2つ目のグループには1度読ませた後、すぐにテストを受けさせた。2日後両グループをテストしたところ、1つ目のグループの正答率は54%だったのに対し、2つ目のグループは68%だった。さらに1週間後のテストでは42%対56%と、やはり直後にチェックテストを行ったグループの正答率の方が高かった。(p.39から抜粋して意訳)

こちらの実験では2日後の調査では「覚えるトレーニング」だけのグループ:「思い出すトレーニング」も加えたグループ=54%:68%、1週間後の調査では42%:56%という結果がでました。

このように「覚えるトレーニング」だけを繰り返し行うよりも、「思い出すトレーニング」も加えて行った方が効果が高いのです。さらにこの「思い出すトレーニング」は、1回だけでなく複数回行った方が良いということもわかっています。

学生たちを3グループに分けた。そしてどのグループにも60もの新しい重要語句が出てくるストーリーを聞かせた。1つ目のグループはその話を聞かせただけ。2つ目のグループには話を聞かせた直後に1回テストを受けさせた。そして3つ目のグループには3回テストを受けさせた。一週間後のテストで1つ目のグループの正答率は28%、2つ目のグループは39%、3つ目のグループは53%だった。(p.31から抜粋して意訳)

(1)「覚えるトレーニング」だけ:(2)「思い出すトレーニング」1回:(3)「思い出すトレーニング」3回=28%:39%:53%という結果です。

ソフィー学習塾の取り組みと家庭学習でお勧めの取り組み

他の塾や予備校では「覚えるトレーニング」の方が多いことが一般的なのですが、ソフィーでは「思い出すトレーニング」を普段からかなり多く行っています。手作りの単元ごとのチェックテストを用意したり、英単語や社会の重要語句をフラッシュカードを使ってチェックテストしたり、その他間違えた問題だけをもう一度チェックテストできる自動問題作成データベースシステムなども取り入れています。

なかなか複数の塾へ行ってデータを取りながら比較する、ということはできないのでわかりにくいと思いますが、少なくともこれらの実験データを見ればソフィーのやり方が効果が高く出るのは明らかです。私自身、大学生時代の家庭教師、個人塾でのアルバイト、大手塾でのアルバイト、そして新卒後の大手予備校での講師経験とソフィー学習塾での成果を照らし合わせて比べると、これらの実験で出ている数値と実感値はほぼ同じです。

このような「思い出すトレーニング」は、この手法を理解し生徒が個々で意識すれば、様々な場面で応用が効き、成果が上げやすくなります。ですから生徒たちにはソフィーで受け身でこれらの手法の恩恵を受けるだけではなく、自分たちでそのノウハウを理解しソフィーの外、すなわち学校や家庭でも応用できるようになって欲しいと思っています。

いずれにしても、この「覚えるトレーニング」だけを繰り返すのではなく「思い出すトレーニング」にもっと重点を置く、ようにすることで、学校での学習も、自宅での学習も、そしてもちろんソフィーでの学習も、もっと効果を上げやすくすることができます。

ぜひお子さんのサポートの参考にしてみてください。

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