子どもの能力を伸ばすほめ方:「プロセスぼめ」

一般的にやる気を促すために子供をほめることは良いことである、と考えられています。しかし実はこれは間違いです。ほめ方にはいくつかの種類があり、そのほめ方によっては長期的に子供のやる気にストップを掛けてしまう、ということも非常によくあることなのです。ではどうしたらいいのでしょうか?ここでは子供のやる気を促し、能力を伸ばす手助けをしてあげるための上手なほめ方を紹介します。

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【問題点】「ほめること」が、逆効果になることがある

一般的に「ほめること」は良いことである、と思われています。そして子どもをほめて育てることは望ましいことであるし、それができればより良い子育てができるはずだ、と思われています。しかし、実はこれは誤った思い込みです。ほめ方によっては、相手のやる気を失わせ、成長を妨げてしまうこともありえるのです大切なのは「どうほめるか」というところ。この「どうほめるか」を間違えてしまうと、逆効果になってしまうのです。ではどうやって子どもや他人をほめてあげるのがいいのでしょうか?

【実験】「結果ぼめ」vs「プロセスぼめ」

簡単に言うと、「結果」をほめるのではなく、そこに達するまでの「プロセス」をほめるようにする、というのがコツです。結果をほめるよりもプロセスをほめるようにしてあげたほうが、相手の意欲も出やすく、その意欲も継続しやすくなるのです。

ここで非常に興味深い実験を1つ紹介しましょう。ハーバード大学のキャロル・ドエック博士らによって行われたものです。

cover_mindsetこの実験ではまず数百人の生徒たちを2つのグループに分けました。そして両方のグループに知能テストを受けさせます。1つ目のグループは「結果ぼめ」グループ。このグループの生徒たちがテストで正解した時には、「よくできたね」「こんなのができるなんて頭いいね」などと、その結果や能力をほめました。2つ目のグループは「プロセスぼめ」グループ。彼らが正解した時には「取り組み方がとても良かった」「よくあきらめずに考え続けたね」などと、そのプロセスや努力をほめました。両方のグループとも最初のテストの点数はほぼ同じでした。ところが最初のテスト後にそれぞれ異なるほめ方をしてから、結果に違いが出始めました。「結果ぼめ」グループは、「もう1レベル難しい問題に挑戦したい?」と聞いた時、ほとんどの人はその挑戦を拒みました。ところが「プロセスぼめ」グループは90%以上の生徒が、すすんで挑戦することを選んだのです。(p.71-72, “Mindset”を要約して和訳)

この実験から「結果ぼめ」をされた人は失敗を恐れるようになり、新しい挑戦を避けるようになる、ということがわかります。それに対し「プロセスぼめ」をされた人は自らすすんで新しい挑戦に取り組みやすくなる、ということもわかります。当然、すすんで新しいことに挑戦する人は長期的な学びは多くなりますから、よりスムースに成長していきやすくなります。

【解決策】「プロセスぼめ」をしよう

私たちの多くははつい他人の「結果」ばかりに目が行ってしまいます。 確かに点数とか売上とか打率とか勝敗とか、そういうものはわかりやすく、評価がしやすいものです。だから自分の子どもにしても、部下にしても、同僚にしても、ついその点に関しての評価をしてしまいます。 ほめるときも相手が良い結果を残した時だけほめる、ということをしてしまいがちです。

しかしこの実験からわかるのは、そうやって結果だけをほめ続けていく、というのは危険である、ということです。「いい子だね」「よく出来たね」「えらいね」などと、結果だけをほめ続けるのは、場合によっては相手の挑戦する意欲を失わせ、安全に結果が残せることしかしない人間を作ってしまうことになるかもしれません。

そうならないためには子どものテスト結果が返ってきた時に「結果」ではなく「プロセス」をほめるようにしてあげることです。テスト前の準備の仕方や、好きな教科に取り組む姿勢とかをほめるようにすることです。その他の場面でも、試合にのぞむまでにした練習や、会場に入るまでに行った準備の仕方や、試合中の振る舞いや、他人に対する姿勢や、失敗を活かそうとする態度など、そういうものを問い、評価するようにしていくのです。

「結果」が出た時でも、「プロセス」が悪いことがあれば、それを指摘することもあるでしょう。「結果」が出ない時でも、「プロセス」が良いものであれば、それをほめることもあるでしょう。

writing-catこういう相手のほめ方をしていくと、「新しいことに挑戦し続ける人」を育てていくことが、より可能になっていきます。

まずはお子さんをよーく観察してみましょう。そしてその子の「結果」ではなく「プロセス」をほめてあげてみてください。たとえ結果が出ていなくても、「プロセス」が良ければそれをほめてあげましょう。もし「プロセス」も悪ければ、結果の悪さは指摘せずに、その「プロセス」を改善することを提案してみましょう。

急に何かが変わることはないかもしれません。でも、続けることで少しずつ変化が現れてくるはずです。ぜひ試してみてください。

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