新時代の大学入試に備える~すべての入試に必要な「主体性」「多様性」「協働性」~

こんにちは。ソフィー学習塾の北岡です。 大学入試が近づいてきました。今回は、中学生~高校2年生向けに、大学入試について考えてもらうための記事です。新しい指導要領に合わせ、2021年2月の入試出願から、早稲田大学の一般入試で「主体性」「多様性」「協働性」を生徒自ら記入することが求められています。今後の入試準備について考えていきましょう。

早稲田大学の入試制度変更と考察

早稲田大学では2021年度入試から全学部の一般入試でWeb出願時に「主体性」「多様性」「協働性」の経験を受験生自身が記入することになっています(現段階では、得点化されません。入学後の指導に役立てる方針です)。 これは学校の先生による調査書等ではなく、受験生自らが書くものとなっています。

また、それ以外に入試制度変更の方向性としては、

  • 知識の暗記だけでなく、考察・記述する教養と表現力が求められる
  • 文系でも数学が重要視される
  • 入試形態がより多様化(公募・AO・地域連携等)

ということが、明らかで、今後、年度を追うごとに、その傾向は強まるかもしれません。

もともと、私大の中でも早稲田・慶応は入試制度が多岐にわたっていましたが、他の大学でも偏差値や筆記テストにしばられない、人物本位の評価からなる入試が増えていっています。 今後は、主体的で自分の頭で考えられる受験生にとっては一般入試以外のチャンスが増えていくとも捉えられます。

他大でも人気大学ほど独自路線が強まりそう

「大学進学」について真剣な高校生が行きたがるような、
人気のある大学こそ、今後、ユニークな入試が増えていくでしょう。
人気がある学校や上位の学校だからこそ、優秀な学生の取り合いになります。

ここでいう「優秀な学生」とは、知識をただの暗記で終わらせず、実生活や実社会で役立てることができる学生、なにかを実行できる能力がある学生です。

または、「筆記テストの得点=人間として優秀」だと思っていない学生のことです。
そういった優秀な学生にアピールするためにも「うちの大学は新しい時代に適応している」という入試をすることが大学側にとって重要になってきます。

そのため、独自路線を打ち出して差別化を図り、学校の特色を色濃くし、ただの知識量を競うだけでない入試、理由や目的がある入試が増えていくでしょう。

このブログを読んでいる学生や保護者の方も同じ気持ちの方が多いと思っていますが、
「従来の丸暗記やパターン演習、受験だけに特化した小手先のテクニック」が「本当の知性ではない」ということを知っている人達を集めたいのです。

もちろん、知識や暗記、パターン演習を否定しているわけではありません。 知識があること、暗記できることは、素晴らしい価値・能力です。

ただ、知識量や暗記量、パターン演習能力は、最低限必要な能力という位置づけになっていくのです。

どういう時代背景で入試が変わるのか

大学は、いつの時代も、今後の未来を見据えて、入試制度や授業・研究内容が変わっていきます。

今は、今後の「価値観が多様化し、生き方の正解がなく、仕事の種類も形態も変わり、幸せのかたちも人それぞれになる時代」を見据えています。

そんな時代は、不確定要素が沢山あって、人の心が不安定になりがちな時代になるでしょう。

しかし、各大学は、そんな時代でも強く生き、社会に貢献できる人間を育てたい。その気持ちから入試を変えていっていると見ることが出来ます。

そして、多くの人はもう気づいているでしょうが、すでに時代は変わって「価値観のものさし」が多岐にわたっています。「偏差値という単一のものさし」ではかる時代ではないわけです。

補足:現時点での新しい入試の例

東大・京大をはじめとする旧帝国大学、新潟大などの地方官立大学は、現在も推薦入試や、特色入試(面接+論文を読み記述式で答える)などの入試形態があります。 私立大では、たとえば、早稲田では推薦以外に新思考入試、慶応ではFIT入試・バカロレア入試などがあります。

関東圏唯一の国立女子大であるお茶の水女子大は、「図書館入試」というものも用意しています。この「図書館入試」は2日間にわたって行われ、 自由に大学の図書館の資料を用いて、レポート作成・グループディスカッション・面接をする試験です。もはや、知識を頭に入れて、ペーパーテスト一発勝負、というものでなく、 自分の持っている知識と、それを補完する情報を集めて組み合わせ、新たな価値ある情報を作り出すことを求められています。

新時代の入試は、どれも「主体性」・「多様性」・「協働性」が問われている

多くの大学で増えていくと思われる新形態の入試も、今後の一般入試の問題の傾向も、抽象化していくと、どれも「主体性」・「多様性」・「協働性」が問われています。これは「新しい学習指導要領 が目指す姿」(文科省)に表明されていることでもあるため、各大学は、この「主体性・多様性・協働性」をいかに育めるような入試にしていくかが課題にもなっています。

具体的に、それぞれの要素につながる理由を考えてみましょう。

主体性につながる理由

そもそも、多岐にわたる入試のなかから、志望校を見つけ、入試形態・募集要項を把握し、独自の入試形態に適応させていく思考と行動自体が、「主体性そのもの」です。

他人に「やれ」と言われなくても、自分の人生に必要なことを自分で考え、実行する。そういう人間にならないと、そもそも新時代の入試には太刀打ちできません。

いや、新傾向の入試、一般入試以外の形態だけでなく、すでに難解な大学入試は、国立・私立問わず一般入試であっても、共通テストであっても、いまは、小手先のテクニックが通用しない問題、自分の頭で考えないと到底解くことができない問題が増えてきています。

自分で考え、自分で決めるから「主体性」が身につく

まず、私たちソフィーがお伝えしている、最も手軽に主体性を高めるトレーニングは、「自分で選ぶ」です。

「自分から動く」という主体性を身に着ける際、「自分『から』動く」というのは、最初はとてもハードルが高いものです。

「自分『から』動く主体性」は、人に何を言われなくても、「自ら課題を発見」し「課題解決の手段を考え」、「手段を実行」する、という要素を持っています。これらの要素をすべて満たすのはハードルが高いですが、

「自分で選ぶ」ことは「課題設定し解決する」よりもハードルが低い、主体性トレーニングの第一段階です。まずは、他人から課されたものや保護者・学校等に提示された選択肢を「自分で選ぶ」ことから始めます。

そして、主体性を育むには、「振り返り」も大事になってきます。自分で選び決めたことを、振り返るからこそ、次の改善に自分の意思で取り組むようになります。他人が選び決めたことだと、「自分で決めていないから」うまくいかなくても他人のせいにしやすく、また、評価自体も自己評価をする仕組みでなく他者の評価に依存する仕組みになりやすいものです。

ちなみに、ソフィーでは、昨年、京都大学医学部の特色入試(面接+論述+センター試験)を準備していた生徒は、しっかりと自分の頭で考え、心で感じた志望動機を練っていたため、
東北大学の医学部を一般入試で受けた際、面接で満点をとることができています。つらい時、自分の本心からなる志望動機は自分の支えにもなります。

多様性につながる理由

そもそも「推薦やAO入試でなく、一般入試で入学することが人として優れている」というような「偏差値至上主義・ペーパーテスト至上主義」の価値観を持っていたとしたら、 新傾向の入試に対応できません。新傾向の入試や新形態の入試に「うしろめたい気持ち」があっては、本気で準備できません。

どんな入試形態であっても、「大学に入ってからがスタート」「学び続けることが大切」という気持ちを持っていることが、多様性を持つための重要要素の一つになります。

多様性とは、「人それぞれの価値や存在意義を受け入れていくこと」であり、「自分は自分」と受け入れていくことでもあります。
高校生の時点で「偏差値に囚われていない」ことは、多様性への第一歩です。

そして、実は、この「偏差値に囚われない」ということが、一般入試のペーパーテストの勉強にも役立ちます

偏差値は、他者との比較を数値化したものです。他者との比較で真ん中の順位なら50、という基準値にすぎません。

この他者との比較に囚われず、「他人はどうあれ自分のやるべきことをやり続ける」ことが最もペーパーテストの得点にもつながります

「他人は他人、自分は自分」という、多様性の根底にあるべき考え方ができるから、自分の短所を見つめ、長所を伸ばしていけるんです。

価値観を見直すススメ

ソフィーでは、「他人は他人、自分は自分」という考えを持ち、自分軸を発見するために、時間をとって価値観を見直すことを勧めています。 たまにミニイベントで自分の価値観と向き合い、対話をしていくことをしています。お家でも、「自分にとって大切な価値観ってなんだろう」と考えたり、興味のあるものに向き合うことをお勧めします。

また、ソフィーでは、オープンな空間で、異なる学校・異なる学年の生徒が一緒に勉強しています。これによるメリットの一つは、世代間が持つ価値観の違いに気づいたり、自分とはバックグラウンドが違う人間の情報が少しずつ見えてくる、ということです。そうして、イベントなどなくとも、通っているだけで、スタッフと他の生徒のやり取りが目に入ったり耳に入るので、自然と多様性を受け入れ、自分とは何か、を見直すトレーニングになっています。

協働性につながる理由

協働性は、他者とともに何かに取り組んだり、チームワークを発揮しお互いの良さを活かしていくことです。

この協働性を高めるには、前段で書いたような「多様性を認めること」がそもそも大事になってきます。

自分自身の長所と短所を客観的に知り、「他人に嫉妬しない自分」がいるから、いいチームワークを生むことができます。

また、「協働性」というと、どうしても「同じ学年の友人とうまくやる」というイメージが先行するようです。

しかし、協働性には、学校の先生、年上の先輩や年下の後輩とうまくやっていくことも含まれます

つまり、自分が求める教えを乞うことができる「教えられ上手」の能力や、チーム全体の能力を上げるための「教え上手」になる能力が大切です。

そして、これら「協働性」につながる能力が、「どうして新傾向の入試で育まれていくか」というと、新形態の入試でディスカッション等があるというだけではありません。

新形態の「単一正解のない問い」を考察する記述に対応したり「自分とはどういう人間か」を深堀していくには、他者との関係が必須です

自分が持ってない知識や視点を得るには協働性と関連する「議論の相手としてふさわしい価値ある自分」になる必要がありますし、他者との関係性のなかで、「自分の特性」が見えてくることもあるでしょう。

新形態の入試以外でも、今後は従来と比べ、しっかりした思考力が必要となる問題が増えることが予想されます。

そうなったときに、試行錯誤を繰り返し、自分にない知識や考え方を身に着けていくには、他者との協働性に近い、自分を適応させる柔軟性が必要となってきます。

自分の思い込みから脱却する習慣を持っていたり、間違えるのを恐れず試行錯誤、間違えてもリカバリーできる能力のある人は、勉強はもちろん、人間関係のなかでもきっと「うまくやって」いけるはずです。

他者が共存する空間でどう振舞うか

ソフィーでは、小学4年生~高校3年生までの学校も学年もバラバラな生徒たちが同じ時間帯に、自ら必要なことを考え、年の離れたスタッフのサポートを求めながら、各自の目的達成のために通っています。

こういった、年齢や立場、背景がばらばらな人間が同じ空間にいる機会は、社会において自分はどう生きていくか、の練習期間になると思っています。

ソフィー以外であれば、色んな大人や同い年、年下までが同時に触れ合える習い事やイベントに顔を出すのもお勧めです。生徒の話を聞くと、ダンス系の習い事では、幼稚園児くらいから高校生まで一緒のスタジオにいるものもあるようで、そういった機会が今後とても大きな意味を持ってくると思います。

(関連記事:真のアクティブラーニングと協働性①)