親子で将来を一緒に考えるための THE おしごとファイル 【コーヒースタンド編】青柳拓郎さんインタビュー

前回の「THEおしごとファイル【有機農業編】」は非常に好評でした。引き続き今回は【コーヒースタンド編】。長岡市山田町で「グッドラックコーヒー」を経営している青柳拓郎さんにインタビューを行いました。

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コーヒースタンドを始めるまでの経緯

三浦(以下:三):まずはグッドラックコーヒーを去年始めるまでの経緯をザッと教えてもらえますか?

青柳(以下:青):わかりました。もともと私はプロミュージシャンになりたくて、音楽関係の専門学校に行っていました。でも、その夢は専門学校卒業時に諦めたんです。ただ、専門学校時代に研修で行ったロンドンでスターバックスに行って、そこでその雰囲気に衝撃を受けました。そしてカフェに興味をもつようになりました。

三:ロンドンで?当時、もう日本にもスターバックスありましたよね。

青:はい。東京にはありました。でも、新潟にはなかったんです。だからそのロンドンが初めてのスターバックスだったんです。

三:なるほど。

青:専門学校卒業後カフェで働きたい、という気持ちが出てきて、チャンスがあって新潟市のカフェで働くようになりました。でも、1年半くらい経った時に、親がやっていた造園業を継ぐことになり、カフェの道も一旦諦めたんです。でも、話せばすごく長くなるのですが、ごく簡単に言うと結局その夢を諦めきれず、10年造園業をやった後で、それを閉業して、去年コーヒーショップをはじめたわけです。

三:10年間、その夢を持ち続けたわけですね。

青:そうですね。どういうわけかその夢は諦めきれなかったんです。

:起業までにどんな準備をしましたか?

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青:自分が好きなカフェやコーヒーショップを巡ったり、いろんな人の話を聞いたりしながらイメージを固めていきました。その結果いろいろ広がっていたイメージの余計な部分は削ぎ落とされてきて、最終的に今のようなシンプルなコーヒースタンドを自分はしたいんだ、ということが明確になっていきました。

コーヒースタンドを経営する楽しさ

三:どんな人に来て欲しいと思ってコーヒースタンドを作ったんですか?

青:メインは近所の人です。歩いてふらっと来てくれたり、通勤の途中に寄ってくれたり、というのをイメージしています。行きたいと思ったらいつでもすぐ行ける、という範囲のところにホッと出来る場所がある、というのが理想です。

三:なるほど。

青:お客さんとのコミュニケーションをとにかく大切にしています。共通の趣味で一緒に盛り上がったり、お客さん同士で同じ興味がある人たちをご紹介していったり。

三:それはいいですね。毎日仕事をしていて、一番の楽しさって何ですか?

青:やっぱり毎日新しい出会いがあって、幅広い世代や職種の人たちと出会って話を聞ける、というところがエキサイティングなところだと思います。一杯のコーヒーを通して、ふつうだったら出会うことがない人と出会って、聞けないような話を聞けて、そして様々な方との人間関係を築いていける、というのがなんと言っても醍醐味です。いろんな人のいろんな話を聞いて毎日新しい発見や気づきがあります。そういう日常を過ごせるのは、この仕事の特権だと思います。そしてもちろんそうやって来てくれた人たちにひとつひとつ丁寧にコーヒーを入れて差し上げて、そのコーヒーを美味しいね、って言ってくれることも大きな喜びです。

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三:私はグッドラックコーヒーを見ていて、「日常をクオリティアップさせる」っていう感じにすごく惹かれるんですよ。毎日新しい人に会って聞けない話を聞く、って例えばバーとかでもできると思うんですが、バーは夜に行くし、どちらかって言えば非日常を楽しむ感じだと思うんです。お酒も入るし。でもグッドラックコーヒーのような場所って、毎日の仕事の合間にちょっと寄ったり、朝一日の始まりに毎日寄ったりするなかで、いつも顔なじみの青柳さんが自分の好みを知ってくれて淹れてくれるコーヒーがあって、「いつものアレ」って言える心地よさがあって、そうやって毎日の仕事を「もうちょっと頑張ろう」っていう気持ちにさせてくれる、という感じが良いと思うんです。その「日常をクオリティアップさせる」感が、長岡では新しいと思うんです。

青:そうですね。確かに新しいんだと思います。この「コーヒースタンド」という業態は長岡にも今のところ他にはないですし、新潟市に数店あるくらいだと思います。

これからの夢は?

三:今後の夢とかはありますか?

青:私がこういう仕事をやっている様子を見て「自分でもやってみたい」と思う人が増えて、もっと長岡やその他の場所にこういうコーヒースタンドが増えていったらいいな、と思います。そして、人が気軽にコーヒーを通して繋がれるような場所が増えていって、数年後に長岡や新潟にカフェの文化というのが根付いている、という状態になっていたらすごく理想だと思います。

三:そのイメージの元になっているような場所とか地域とかってあるんですか?

青:あこがれているのはオーストラリアのメルボルンです。メルボルンには行ったことはないんですが、いろんな本とかネットとか人から聞いたりとかして調べたら、メルボルンには本当にコーヒースタンドがいっぱいあって、「コーヒー文化」が根付いていて、それぞれの人が自分のお気に入りのコーヒースタンドがあって、毎朝そこでコーヒーを飲んで、バリスタと少しおしゃべりして、それから会社へ行く、っていうそういう習慣が当たり前になっているようなんですよ。そういうのに憧れがあります。

三:夜に行きつけの店がある、のではなくて、朝に行きつけの店がある、って確かに健康的だしかっこいい感じがしますよね。

青:そうでしょう?

三:でも、そういう「コーヒー文化」が広がってたくさんコーヒースタンドができるってことは、別の言い方をすれば「競争相手が増える」ってことですよね?それってイヤじゃないんですか?

青:そういう気持ちは全然無いです。だから今長岡でコーヒースタンドを始めたい、って言ってきている人の相談にもどんどん乗っていますし。

三:なかなか他の業界にはない雰囲気ですよね。でも、それって素晴らしいと思います。やはり「儲けよう」という出発点じゃなくて「コーヒー文化を広めよう」という出発点だからなのかもしれませんね。

青:そうなんですかね。僕としては自然とそういう気持ちになっているだけなので、その気持ちがどこから来ているのか、とかはよく考えてみたことはありませんが。

三:そもそも「コーヒー文化」って何なんでしょうね。日本にはもともと昭和の頃に「喫茶店文化」みたいなものがあったわけで、それだってコーヒーの文化と言えばコーヒーの文化であるわけなのに、それとは違う青柳さんが言うところの「コーヒー文化」ってどういうものなのでしょう?

青:う~ん、コーヒーを通じて人々が気軽に交流しあう文化、ですかね。

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三:なるほど。カジュアルな人間関係、というのがカギなんでしょうね。仕事や家庭以外で気軽に人間関係を育める場所って、少なくとも今の日本には十分にあるわけではないですものね。

青:そうですね。

三:他に今後の夢はありますか?

青:できるだけ早いうちにメルボルンへ行って、現地のコーヒー文化を肌で感じてみたいです。今、友だちがワーキングホリデーでメルボルンへ行っているので、メールなどでいろいろな情報は入ってくるのですが、やはりそれを聞けば聞くほど、自分も行ってみたいという気持ちは高まってきますね。

三:ぜひそこから新しい情報やアイデアを仕入れて、長岡の人たちに紹介してください。私は世の中の雰囲気っていうのは、その時代にその国に住む人たちの会話の種類や質に左右されると思うんですよ。ネガティブな会話ばかり起こっている国は暗い雰囲気になるでしょうし、ポジティブな会話がたくさん起こっている国は明るい雰囲気の時代や国になっていくと思うんです。そしてそこに大きな影響力を与えうるのが、青柳さんがやっているようなコーヒースタンドだと思うんですよ。ぜひどんどんポジティブな会話が日常的にコーヒーを飲みながら毎日できるような場を育てていってほしいな、と思います。

青:ありがとうございます。

お父さんやお母さんへのメッセージ

三:さて、最後に、これを読んでいるお父さんやお母さんへのメッセージは何かありますか?

青:例えばコーヒースタンドをもしお子さんがやりたいと言ってきたら、頭から否定するのではなくて、どうしてそれをやりたいのか、とか、本当にそれをやりたいのか、とか、いろいろ話を聞いてあげて、もし本人が本当にそれをやりたい、と言うのであれば、ぜひサポートしてあげてほしいと思いますね。

三:私、個人的には、青柳さんがやっているようなコーヒースタンドの潜在的な市場って、長岡にもめちゃくちゃあると思うんですよ。例えば長岡にはラーメン屋はめちゃくちゃたくさんあるじゃないですか。そして今日はこのラーメン屋に行こう、明日はこのラーメン屋に行こう、って言って比較しながら違いを楽しんでいますよね。コーヒースタンドにも同じようなタイプのニーズが人々の中にあると思うんです。そう考えると、長岡にあるラーメン屋さんと同じくらいの数のコーヒースタンドができてもおかしくないと思うんです。しかもラーメンは毎日は食べないかもしれないけど、コーヒーは毎日飲みますし。一日3杯や4杯も飲む人もいるでしょうし。そう考えれば潜在的なマーケットはものすごくあると思うんです。

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青:確かにそうですよね。私はこういうやり方できちんと生活していける、というひとつの成功モデルケースになりたい、と思っています。ですからグッドラックコーヒーに来て頂いて、そのこれからの様子を見て頂いて、ああ自分の子供もこういうことが可能なのかもしれないな、とより感じていただけるようにまずは自分として頑張って行きたいな、と思います。

三:あと、青柳さんのところのようなコーヒーショップが成功しやすくなっている環境としてインターネットの影響は大きいと思うんですよ。本当に美味しいコーヒーを出して、本当にいい場を作っていけば、それをFacebookなどで口コミしてくれますよね。前を通っただけではコーヒーが美味しいかどうか、お店の人がいい感じかどうか、というようなことはわからないですが、ネットを見ればそれがある程度推測できるから、いいコーヒーを出しているお店が軌道に乗って行くスピード感はかなりアップしていると思うんです。

青:それは間違いなくそうですね。うちもFacebookページを持っていますが、その影響力は大きいです。

三:それはこれから起業する人や起業しようという人を支える親としては安心材料のひとつですよね。

青:そう思います。ぜひお父さんやお母さんには、子供の「やりたい」という気持ちを大切にして前向きにサポートしてあげて欲しいと思います。

【インタビュー後記】インタビューを通して青柳さんの誠実で真っ直ぐな情熱が伝わってきました。質問に対してはひとつひとつゆっくりとお答えをしていく言葉から、奥に秘めた情熱をひしひしと感じました。その青柳さんの情熱を体感してみたい方はぜひ一度、山田町にあるグッドラックコーヒーを訪れてみてください。
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