真の協働性とアクティブ・ラーニング②~数学ミニレクの様子から~

こんにちは。ソフィーの北岡です。
ここ数年、各種メディアで「100年人生」を念頭にした大学入試改革や中高大の接続など教育改革についての情報を目にします。
前回は、そんな情報の中で目にすることも多くなってきた「アクティブ・ラーニング」について、今回は今後ますます重要になってくるであろう「協働性」についてです。先日生徒主催で開催された数学のグループ学習(ミニレク)の様子からもらったインスピレーションをもとに書いています。ミニレクの様子、アクティブラーニングについては前回の記事をご覧ください。

1. なぜ協働性が今、注目されているのか。

学校教育の現場でも協働性を育むことを目的に、グループ学習やディスカッションの時間が年々増えてきています。
理由の一側面としては、学問・技術や社会の発展に、オープンイノベーションの必要性が高まってきていることがあります。これは、企業間や企業と大学間での共同研究や連携、学生同士でのスタートアップなどが活発なアメリカと、企業間・産学連携、企業内部署間ですら閉鎖的である日本を対比する際によく聞かれることと思います。2008年に、iPhone3G の発売、Facebookの拡大と浸透、GoogleのAndroidとChromeのリリースなどで、情報取得・共有の次元が格段に変わったことも影響し、各種メディアで頻繁にオープンイノベーションの必要性が問われ、以来、加速度的に耳にするようになっているように思います。

こういった技術・社会の変化に伴い、専門知識が深い者どうしで連携をとったり得意を活かすことが重視されるようになってきました。

社会の要請は学校教育や入試にも反映されるため、入試改革に伴い「主体性・多様性・協働性」が指標になっています。東大・お茶の水女子大、早慶MARCHをはじめとして、上記3指標をテーマにした、ペーパーテスト以外の入試も導入されてきています。ここに書いた大学が入試に取り入れている、ということは、それこそ他の大学も優秀な学生を取るために徐々にペーパーテストのみの形式から脱却することが考えられます。

2. ソフィーでの考え方やアプローチ

私たちは、「主体性・多様性・協働性」の能力を、人は生まれながらにして持っているとして生徒の中から引き出すアプローチをします。

私たちは、生徒が「自然」な状態に戻ると、他のソフィー生やスタッフに興味・関心を持つこと、コミュニケーションをとりたい気持ちが芽生えること、自然に話しかけたり友達になれること、を知っているからです。生まれたときにもともと持っていた能力なので、育った環境や経験で一度鈍くなってしまったとしても、時間をかけてアプローチすればよみがえります。

ソフィーにどういった生徒がいるか具体例を少しご紹介します。もちろんソフィーの環境だけで以下のようになるわけでなく、家庭、学校、ソフィーでのバランスのうえに成り立つものです。

高校2年生Aくん(ソフィー5年目)

今回の数学ミニレクを主催したA君は、ソフィーのオープンな空間で交流を生むことが自然にできます。
A君は同じ学校の生徒がソフィーにはいませんが、ミニレクといった特殊な時間でなくとも、気になる生徒を見つけては「学校最近どうですか?」「模試や難しい問題あったらください」「時間あるとき質問いいですか?」といったように話かけています。学校も学年も異なりますが、臆せず関係を作ることができます。得意な数学は学年問わず、年上にも教えてあげたり、苦手な科目は年下の生徒にも質問することができます。

高校3年生Nさん(ソフィー7年目)

小学生の時から通っているNさんは、間接的に周りに好影響を与える人気者です。他のソフィー生や季節講習のみ毎回参加する高校生が「Nさんと一緒の空間だとやる気がでる」と言ってソフィーに通ってくれています。一緒の空間にいることで人の能力やモチベーションを上げる雰囲気や安心感が出せる能力は協働性において大切な要素かと思います。

卒業生Aさん(ソフィー歴6年)

卒業生のAさんは、教員を目指していることもあり、たまにボランティアスタッフとしてソフィーを手伝ってくれています。Aさんは、観察力や察知力がとても高く、人の「ちょっとした心の変化」に非常に敏感で、マイナスのメンタルをプラスにもっていくことや、各生徒の長所を見つけることが得意です。他のスタッフが「やってくれたら助かること」に気づいてくれて、率先して何も言わずにやり終えていることが多くあります。

上の3人に共通するのは、年齢問わず多くの人とコミュニケーションをとれたり、一緒にいる人を勇気づけたり、人の長所を活かしたり、素直に人をほめることができる、といった精神的な協働性があることです。形式だけのグループワークの能力が高いことよりも、精神的な能力に私たちは遥かに価値を置きます。

というのも、形式的な能力は短期間で手法として身に付けることができますが、精神面で協働的になるには、日々の過ごし方や習慣、長い時間が必要だからです。

テストで測ることが難しいかもしれませんが、あくまで本質的な協働性に重きをおいています。そして、その能力は、リアル世界での関係性によって育まれるものなのではないか、と思っています。

最後に、ほんの少し具体的なヒントとして、精神的な協働性の根幹となる力を現時点で3つ書くとすると以下のものだと考えます。

 

      • ”ほんとう”の意味での自己肯定感・自己効力感がある。
      • 自分の外の対象にも興味関心を持つ。
      • 意思疎通を円滑にする言語能力・非言語能力がある。

 

以上の3つがあれば、他に細かく必要な能力があってもカバーしていけると考えてソフィーではアプローチしていきます。

ご家庭でのヒントになれば幸いです。